V.Dの日には正露丸持参で
さてさて、ここはホロウバスティオン。
世界が元に戻った今、離れ離れになっていた仲間も一つになり、幸せ暮らしていると、思いきや・・・・・・・・いやいや、そんなはずもない。
醜い醜態をさらす、男共がいるから、平和なんてそんな言葉、百億光年彼方に消えている。
はたから見ていると、面白いが、当事者たちからすれば堪ったものじゃない!
―――これは、イベントをひかえたある野朗達のささやかにして、醜い争いの記録である・・・・・。
「エアリス、できた!?」
小さな可愛らしいキッチンに、わんぱくそうな少女が駆け込み、中に居た女性に声をかける。
「うん、もう少しv」
「う〜ん、いい匂い!なんか腹へってきちゃったよ」
「こら、女の子なんだから『おなか減ってきちゃった』って言いなさい!」
「ちぇっ、それシドにもレオンにもクラウドにも言われたよ」
幾分不服そうな少女の名は、ユフィと言う。
「うふふ、いいお兄ちゃんが二人も居て幸せね!」
そして、明るくからかうように笑う女性の名はエアリスだ。
『あんなのが、兄貴だったら堪んないよ!』と零すユフィは、なんだかんだ言いながら嬉々とした表情でエアリスの作っているチョコレートに手を伸ばした。
が、
「こらっ!」
「いてッ!」
つまみ食いしようとした手を、エアリスに思いっきり叩かれてしまった。
「つまみ食いなんかしようとしないで、自分も作ったらどうなの・・・・?―――明日はバレンタインデーなんだから!」
そう、とぅもろー いず ぶぁれんたいんでーーーーー!
女の子が、好きな野朗にチョコレートなんかをやったり、告白しちゃったりなんかするあの、バレンタインデーである!
「ゲーッ!あたし、そんなのガラじゃないって!ってか、好きな奴いないし!」
「あら、別に好きな人にあげなくてもいいのよ?いつも、お世話になっている人とか、仲のいい人とか・・・。そうそう、最近じゃ女の子同士が渡す『友チョ
コ』もあるのよ?ユフィも一回ぐらい作ったらいいじゃない」
ちなみに、友チョコを貰うと、お返しが大変だったりする。
「なにそれ!チョコって、本命だか、義理だか知らないけど、女が男にやるものだろ?女同士でやって何がいいんだよ・・・」
「あら、じゃあユフィはいらないのね?」
「えっ!?」
「よかったー、経費が浮くわ」
「わっ、待った待った、いりますいります!エアリスの作ったお菓子は美味しいんだから!」
「調子いいんだからっ」
とまあ、キッチンでは賑やかにやっているが、それはここだけの話である。
「クラウド・・・・・・。」
「どうしたんだ、こんな遅くに」
深夜、一人クラウドが自室で本を読みながら、うとうとしていたとき、突然のノックが彼の目を覚ました。
もう日付が変わろうとしている頃に誰だろうかと、いぶかしがってドアを開けてみれば、そこには可愛らしく頬を朱に染めたエアリスが立っていた。
「ごめんね、クラウド・・・・。こんな夜遅くに・・・、迷惑だった?」
エアリスは心底済まなそうに、上目遣いで問う。
クラウドは静かにかぶりを振った。
「別に・・・・・。どうしたんだ、こんな格好で」
エアリスはこの冬場、外気がきれそうなほどに冷え切っているのに、肩紐の無い、薄ピンクのネグリジェを着ていた。
薄布を纏っている・・・といったほうが正しいかもしれない。
「うん・・・。あのね、チョコ渡しに来たんだ・・・・・・」
「チョコレートを?今朝貰ったじゃないか」
クラウドは不思議そうに首を傾げてみせる。
だが、エアリスは顔を更に真っ赤にさせて、一瞬惑ったようだったが、すぐに顔を上げると、か細い声で言った。
「違うの・・・。その・・・みんなの前で渡せなくて・・・・。その、クラウドに・・・食べて欲しくて・・・」
言いながら、エアリスは綺麗にラッピングされた箱を一個取り出した。
それは、クラウドが今朝貰ったものとは明らかに質が違うものだった。
小さな正方形の箱は、黒く見えるほどのダークブラウンで、それと相反するかのように箱にはエアリスと同じピンクのリボンが花を作って添えられている。
「これって・・・・」
クラウドが箱を受け取って、指でなぞると、エアリスは意を決したように口を開いた。
「わたし、クラウドのことが、・・・・・・・大好きーーーーーーーーー!!!」
「!」
そして、恥ずかしそうに笑うと、クラウドに抱きついた。
「えあ・・・・・・っ」
「ねえ、クラウドは私の事をどう思っているの?」
狼狽しきったクラウド。
だが、普段と違い随分と積極的なエアリスに返す言葉は見つからず、口は何か言おうとして、開閉を続けるままだった。
その態度をエアリスは消極的な返答だとエアリスは捕らえ、ややあって悲しげに俯く。
「・・・ごんめんね。迷惑だったね・・・・・・」
そうして、クラウドの腰に回していた腕を静かに下ろすと、切なげに笑う。
「急に抱きついたりなんかして・・・・ごめんね・・・」
そんなエアリスの顔が余りにも儚げで、クラウドは思わず、向こうを向き直って部屋を出て行こうとするエアリスの腕を取った。
「待てよ!」
「・・・・・・・・・っ!」
驚いたエアリスがその眼を大きく見開き、クラウドを見つめる。
いたたまれなくなって、クラウドはなだめかすかのようにエアリスに言った。
「そんなことない・・・・・・・うれしい」
顔を背け、頬を朱に染めてぶっきら棒にはき捨てれば、エアリスは一変してくぐもった顔に華を咲かせた。
その様子にクラウドはほっと胸をなでおろす。
「ほんとうに・・・・?よかった・・・・!実はもう一つプレゼントがあるの」
「もう一つ・・・・・?」
エアリスの心がこもったこの一つだけで十分なのに、とクラウドは首を傾げる。
「うん・・・・・・・・」
そう言うエアリスは、自分から言い出したのに、言葉が繋がらず恥ずかしそうに胸元をいじくる。
だがしかし、その迷いを振り切るかのように頭を左右に大きく振った後、勢いよく顔を上げた。
一拍の沈黙の後、エアリスがクラウドに飛びつきベッドに押し倒す。
「・・・・・・・ッ!えあ・・・・っ」
「・・・・レオンには内緒だよ・・・・・・」
ら〜ら〜ららららぁ〜〜〜〜〜あ(愛のテーマ)
「・・・なんてな!あはははははっはははははははっははは・・・ !!」
ベッドの上でバーサク状態の狂人が一人くねっていた。
等身大エアリス人形を抱えつつ。
「決め言葉はこうだ!『私を食べちゃって・・・・・!』」
まだエアリスがそう言ったわけでもないのに、何を考えているのだろうか?そもそもチョコを貰う自信はどこから来るのだろう・・・?
しかし、それは愚問に過ぎない。彼は自信の泉とサハラより広い妄想壁を持ち合わせている。
「これだ・・・・!このパターンでいこう!」
そう言って、爪が手の平に食い込まんばかりにきつく握り締めた拳をベッドに打ちつける。これが彼が興奮したときの所業である。
だがしかし、そのとき余りにも強く叩きすぎたために決壊したスプリングが、彼の顎にストレートアッパーを食らわせた。
「ぐべ・・・・っ!」
もちろんクラウドが怒りに任せてスプリングをバスターソードで叩き切ったのは言うまでもない。
しかし、一難去ってまた一難。
彼のとどまることを知らない妄想壁を邪魔するものが現れた。
どぐぅわああああああああああああん!!!!!
突如クラウドの右手側の壁が脆くも崩壊する。
大量の土ぼこりがクラウドの視界を遮り、さらに鼻の穴の中にも入る。
「ぐふ・・・・!ごほ・・・ごほっ!!!!!げへっ・・・・スコール!!」
「レオンと呼べ。それよりもうるさい。この廃人が」
現れたのはすこーる・・・・ではない、レオンだ。彼は肩に乗せた“ライオンハート”をクラウドに向けていた。
その額には青筋が立っている。
「人様が気持ちよく眠っていたら、なんだ?隣から奇声が聞こえてくる。しかも・・・・・・・・・・」
言うが早くレオンはクラウドとの間合いを詰めていた。
「(オレのエアリスを)食べちゃって〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!??」
どかぁあああああああああああぁぁぁぁあああああんん!!!
どか、ばき、どごごごおおおおっ!
ぐちゃっ
ぐちょっ
ぐちゃぐちゃぐちゃッッ!!
おえっ←?
「はあはあ・・・・、よし、これでもう(おれのエアリスに)悪さはできないな」
相変わらず銀刃のガンブレードを肩に引っさげたスコールが満足そうに天井を見上げた。
その服には返り血がべっとり・・・・・(?)
「こらっ!はなせ、離しやがれ!!スコール!!」
大きな刀傷を腹に負いながらも、鎖でぐるぐる巻きにされて天井から逆さに吊り上げられたクラウドは、それでも元気にわめきたてた。
「ふん、(おれのエアリスに)手を出そうとした当然の罰だ。(オレのエアリスが)誰のものか、まだ分かってないようだな(当然オレのものだろう、ばか
め)」
「さっきから、オレのオレのうるさいんだよっ!!」
「My Aearith・・・・・・」
「英語もだめ!」
「‘*+?&$%##*##“”(訳*マイラバーエアリス)」
「火星人語もだめ!」
腹から、今にも出血死しそうなほどの大量な血液を滴らせつつ、クラウドは必死の形相でスコールに食いかかった。
それをスコールは心底五月蝿そうな目で見る。
「ふん、まあいい。その調子で明後日まで天井にぶら下がっているといい」
「あさって・・・・!?終わってるじゃないか、バレンタインデー!」
横目で見つつ→「安心しろ、お前の分はオレが貰っといてやる」
「!?はーーなーーせーーーーーーっっッ!!!!」
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「おはようエアリス!チョコレートちょうだい!」
二月十四日、バレンタインデー当日の朝。
ユフィは開口一番チョコレートをエアリスにねだった。
「あらあら、もう、ユフィったら!はい、どうぞ。ハッピーバレンタインデー」
「えへ、ハッピィバレンタインデー!エアリス!」
言うが早くユフィは綺麗に包装されたチョコをその場でビリビリと開けてしまった。エアリスはやれやれ、と溜息を付く。
これじゃ、昨日遅くまで包んでた意味がないじゃない!
そんなエアリスの気持ちは露知らず、ユフィは包装用紙から現れた綺麗なチョコに目を輝かせる。
「うっわー!すげ、エアリスこれすごく綺麗だぁ!」
「あらそう?ありがとう。それじゃあ、ありがたーく、食べてね」
「はーい!!」
そのとき、リビングにレオンが入ってきた。
「おはよう」
『おはようレオン!』←えあ&ゆひ
エアリスは、すぐさまチョコの箱を手に持ってレオンに近寄った。
「はい、レオン。チョコレート」
「ありがとうエアリス」
レオンの嬉しそうな顔を見て、エアリスもふんわりと笑いかえす。
だがしかし、そのときクラウドが居ないのに気づいた。
「あら、レオン。クラウドは・・・??」
エアリスの問いに、レオンは見ているほうがぞっとするほど爽やかな笑みを浮かべた。
そう、思わずユフィが全身鳥肌人間になってしまうぐらいに。
「ああ、あいつは腹こわしたみたいだ。寝てるよ。今日は一日休んでるそうだ」
レオンの脚色の笑みの向こうに隠された常闇に気づかぬエアリスが、心底心配そうな表情を浮かべた。
「そんな・・・・・。せっかくのバレンタインデーなのに・・・。クラウドはチョコの食べすぎで毎年鼻血が止まらなくて病院に運ばれるぐらい、私のチョコ作
りに付き合ってくれていたのに・・・。」
九年前の思い出に思いを馳せるエアリス。
チョコが大好きな(とエアリスは思っている)クラウドがバレンタインデーの日に寝込むなんて、よっぽどのことが・・・・・。
「様子を見に行こうかしら・・・?」
そう言ったエアリスの肩をレオンがやんわりと掴んだ。
「いや、止めておけ。今日は誰にも会いたくないって言っていた。ケツの穴がぶったるむって・・・・・・」
ケツの穴・・・・・・!
ぶったるむ・・・・・!
ぶったるむ
ぶったるむ
ぶったるむ
ぶったるむ←エコー
* **************************
「くそっ!はなせ!はなせ!はなせーーーーーーー!!!」←クラウド。
そして、クラウドの分のチョコを渡しておいてと言われて受け取ったレオン。
「さて、下剤でも入れて明日渡しておいてやるか」
それにしても破棄しないオレって、なんてやさしいんだろう・・・・。
その次の日クラウドが一日中トイレに立てこもったのは言うまでもない・・・・。
fin
後書き
えーと、カカオさんからいただいたリクでした。
クラ→エア←スコ KH ということでしたが、すいません!(ジャンピング土下座)まったく、リクにお答えできていません。時間がかかった割に
は・・・。
こんなものでよろしかったらお持ち帰りください!そして、呆れず見捨てずこれからもお付き合いお願いいたしますよう・・・。
駄文失礼しました・・・。