異種混合学パロ
モクジ

● 異 種混合学パロ  ●



やってしまった。
ガンダムSEED DESTINYとFINALFANTASY7の共演!
種運命は微妙でしたが、ステラちゃんとシン君は好き。
しかもこの二人…クラウドとエアリスと似てるんです!

ということで、種運命のシンとステラの説明、そしてどこがクラエアと似ているかを説明してから話に入りたいと思います。


(シン・アスカ) 16歳
主人公。先の大戦で、目の前で両親と妹を惨殺され、大事なものを守る力を求める哀れな少年。
遺伝子操作によって生まれた人達を中心とする国、「プラント」の有志軍である「Z.A.F.T(ザフト)」のエリートでエースパイロット。インパルスガン ダム、のちに表題でもあるディスティニーガンダムに乗る。

(ステラ・ルーシェ) 恐らく16歳←すいません、確かめてないです・・。
ヒロインの一人。偶然シンと出会い、心を通わすも、その実態はプラントと戦争を繰り広げる「地球連合軍」の特殊パイロットだった。遺伝子操作を受けない人 達の集まりでもある「地球連合軍」が、通常では難しいMS(モビルスーツの略。ガンダムを初めとする人型戦闘機のこと)の操縦をさせるために作り出した 「戦うためだけの強化人間。」殺すことしか知らない彼女はシンとの出会いで、暖かい世界を知るも、宿命から逃れることができず、シンの目の前で殺された。 前半はガイアガンダムに乗る。中盤では大量殺戮兵器、デストロイガンダムに乗り、一般市民を相手に大量虐殺を繰り広げる。


(クラエアとシンステの共通点)

1、運命的な出会い。世界観の割にはほのぼのとした出会いだ。
2、主人公の状態。過去に大切なものを守れず、自責の念に駆られている。クラウドがザックスと混合してまで強い自分を作り上げたのは、中盤後半がむしゃら に力を求めるシンに似ている。
3、ヒロインの特殊立場。ヒロインが複数いる点も同じ。またエアリスがセトラ。ステラが強化人間という普通とは異なっている立場であるということも似てい る。
4、主人公はヒロインを「守る」約束をする。クラウドはボディーガード、シンはステラを全ての危害から守ると誓った。
5、ヒロインを守れなかった主人公。誓ったのに守れなかった。エアリスとステラもクラウドとシンの目の前で殺されてしまった。死の際(重要)に二人はなに もできず、傍観しているだけなのも同じ。
6、湖に水葬されるヒロイン。
7、死後、主人公の精神状態がおかしくなってくる。
8、もう一人のヒロインが頭角をあらわし始める。お互い心の傷を抱えて寄りそうのも似ている。
9、ラスト、戦いを終えた主人公の元に、ヒロインが会いに来る。エアリスはライフストリームの中からクラウドを導き出し、ステラはシンに明日への希望を伝 えた。
10、何はともあれひねくれた主人公。

似てませんか!?似てますよね!!
これで学パロをやろうという無謀なことを…。








設定

シン・アスカ(高校一年生)
私立高校に通っている16歳。
年上には一応敬語を使うが、尊敬している人意外には実際は無礼。
思ったことはすぐに口にする。
ちょっと自己過信ぎみ。

クラウド・ストライフ(高校二年生)
同学校に通う17歳。
目つきと性格が悪いがもてることはもてる。
生徒会副会長だったりする。エアリスと付き合っている。

エアリス・ゲインズブール(高校二年生)
同学校に通う16歳。←早生まれ
美人で面倒見が良く学校の人気者。
生徒会会長で副会長のクラウドと付き合っている。
ステラを妹のように可愛がっている。

ステラ・ルーシェ(高校一年生)
同学校に通う16歳。なんとクラウドのいとこ。(たんに金髪どうしです)
凡庸としているが、実はものすごい身体能力を秘めている。
エアリスとクラウドが大好き。二人に懐くあまり、生徒会に入ってしまった。
「クラウドとエアリスは将来結婚するから」という個人的思いこみでエアリスをお姉ちゃんと呼ぶ。

















この学校に入学してから半年経った。
夏休み気分もとうに終わりを告げ、そろそろ中間試験を意識し始めるころ。

シンはどこまでも続く青空とそこを流れる雲を見上げながら四間目の終了のチャイムが鳴るのを待っていた。

いわゆるサボリ。

シンが今いるのは生徒会室の裏の庭であまり誰も来ない。
生徒会室の裏には会長が世話をしているという芝生や花が咲いていて、とくにこの芝生の上で寝転がっていると、なんとも言えないほど気持ち良くなる。

それこそ浮いてしまいそうなほどに。


そのときシンの耳に待望のチャイムの音が届いた。
シンはガバリと起きあがる。
やっと待ちに待った昼休みの時間になった。

シンは財布をズボンのポケットから取り出すと、立ち上がって購買に行こうとした。

だがそのシンを頭上からの強烈な衝撃が襲う。

立ち上がりかけた膝が折れて、勢いのまま壁に後頭部まで打ち付ける。

「……ってぇ!」

痛みがひとしきり収まると、次にシンのうちに沸いたのは、怒りだった。

「おい、おまえ!いきなりなにすんだよ……って」

シンは目を大きく見開いた。
どんな無礼な奴がいるのかと思って怒鳴ったのだが……目の前にいたのは金髪で大きなスミレ色の瞳を持った女の子だった。

シンはその女の子の華奢さや可憐さに目を奪われかける。
だが呆然とするシンの前で、その子の顔は怒りで歪んでいった。

「お姉ちゃんのお花っ!」

「はあ…?」

間の抜けた声がポロリと出る。
よくよく下を見ると、自分の体で下敷きになった花が哀れにも潰れてしまっていた。

「あ…これ……ごめん、君の…?」

シンが慌てて謝るも、少女の表情にはどす黒い色が浮かんでいく。

「おまええええええっ!!!」

先程までの折れそうなほどに可憐だった少女とは思えないほどの声で、少女は喚く。

気づいたときには組み敷かれ、首を絞められていた。

「う…ぐぅ…・・」

どこにこんな力があるのか分からない。
シンは少女を振りほどこうとしたが、喉仏を強く押されて頭の中が真っ白になる。

まずい、そう思った瞬間、聞きなれた声が鼓膜を叩いた。


「止めろステラ!!」

「っ!!」

少女が山猫のような俊敏さでシンの上から飛びあがる。

シンは目を白黒させながら、声がしたほうを見た。

それはシンの良く知っている人物だった。

「クラウド……?」

シンの見ている前で、少女がクラウドに抱きつく。

「シン…か……?」

現れたのは少女と同じ金の髪を持つシンより年上の少年。

その姿を確認した途端、また別の声がした。
それはシンが忘れ様にも忘れられない声だった。

「ステラ!」

高くて澄んだ声。
その声の持ち主が校舎の角を曲がってこちら側に走ってくる。

「ステラ、どうしたの!」

「お姉ちゃん!」

“ステラ”と呼ばれた少女の、怒りに見開かれた瞳が、ふと柔らかい光を取り戻す。

“ステラ”がお姉ちゃんと呼んだのは学校一の有名人であるエアリス・ゲインズブールだった。この学校の生徒会長である彼女は、その美貌と明るさからいろん な雑誌にも取り上げられていると言う。


シンは落ち着いて再び湧き上がった理不尽な怒りをクラウドに向けた。

「おいクラウド!なんなんだよ、こいつ!!」

締め上げられた喉元がずきずき痛む。
喉仏が圧迫されたせいで、声がしゃがれてしまった。

「……」

クラウドは答えない。
少し張り詰めた顔をしてステラを見ているだけだ。
しかし謝罪の言葉は思わぬところから発せられた。

「ごめんなさい…でもステラを許してあげて?」

シンが怒りの向くまま睨み付けた先にはエアリスがいた。

エアリスはシンの凄みにも負けず慄然とした眼差しでシンを見据えた。

「本当に悪いこと、しちゃったね。大丈夫……?」

すべらかな手がそっとシンの傷ついた喉に触れる。
思わず体がびくりと震えた。

シンはぎゅっと拳を握って、この新たな出現者の柔らかな雰囲気に負けぬよう、声のトーンを低くして尋ねた。

「まったくどういうわけか分からないんですけど…。っというか何で俺は花潰しただけでこの子に襲われなきゃいけないんですか!?」

そういって横目でステラという少女を睨むと、びくりと体を震わせたステラがクラウドの背後に隠れる。

―――さっきまで悪鬼みたいな顔してたのに、なんなんだ!

あれじゃあまるで子犬みたいだ。

シンの怒りを感じ取って、エアリスはステラの頬に手を添えて、諭すような口調で問いかける。

「ステラ、どうしたの…?いきなり首絞めるなんて、悪い子がすることだよ…?」

ステラのすみれ色の瞳が細かく振るえだす。

「ステラ…悪くない…もん」

「ステラ」

クラウドにたしなめられて、ステラはなお一層怯えた調子を強くさせた。
やがておずおずと口を開き始めたが、その声も頼りなくか細い。

「だって…お花…植え…たのに…潰しちゃって…、お花…死んじゃ……って!?」

ステラが目をかっと見開く。

「シ…ぬ!?」

体の震えがだんだんと大きくなり、口からは苦しげな喘ぎがひゅうひゅうと漏れ出す。
ステラは全身を猫のようにしならせ、おののいた。

シンをその様子に驚愕する。
怒り狂った彼女とも違う、おぞましい表情。
がたがたと震える手が自分の喉をかきむしり、爪先から血がにじんでくる。
大きく開かれた目は恐怖で満ち、瞳孔は縮んで焦点さえも合っていない。


死ぬ…シヌ……!死ぬはだめ…怖い……コワイ!!!

「いああああああああっ!!」

「ステラ、しっかりしろ!」

「ステラ……!」

二人が交互に声をかける中、ステラの涙を流しつづける瞳がぼんやりとシンを見る。

シンは鳥肌が立った。


「ステラ、大丈夫だから!お花、強いから…死なないから!」

その言葉にステラの瞳孔が弛緩する。
真っ青になった顔を生徒会長に向け、探るような瞳で見つめる。

「ホン…ト?」

「うん、大丈夫。だから、ステラが守ってあげようね」

守る…マモル…

守ることはシナナイコト。

ステラが、マモル。


「……うん」

ステラがゆっくりと頷いた。
クラウドがほっと息をつく。

シンが見ている前で、少女はシンの隣にしゃがみこみ、倒れた花を繊細な手つきで起こし始める。

その様子が、その横顔が、まるで天使のように可愛らしく、シンを怒りを忘れてただステラを見つめていた。

するとエアリスが横に来て、シンにふんわりと微笑みかける。

「ごめんね、クラウドに説明してもらってくれるかな。それと…ステラのこと嫌いにならないでね」

聖母のような笑みにシンは呆然としてしまう。

クラウドを見ると、付いて来いと目配せしてから、踵を返して校舎の影に消えてしまった。
シンはすぐにその後を追いかける。




「おい、クラウド!待てよ」

クラウドとはこの高校に入学してからであった。
生徒会の副会長ということで、入学式や生徒歓迎会でたびたび目にはしたが、本格的に知り合いになったのは入学してから一ヶ月後のことだった。

それも忘れられない形で。


めちゃくちゃ美人な生徒会長。
男子の間ではあっという間に話が広がり、エアリス目当てで生徒会に希望する奴も後を立たなかった。それで今年はこの学校始まって以来の超大規模な選挙に なったとか。

それはそうとシンも人並みに女の子には興味があるし、美人には憧れを感じる。

そしてあるとき偶然にもエアリスの生徒帳を拾ってしまい(べた)……。

なんだかんだ言って話すようになり、メアドもゲットし、勉強を見てもらったり、そのついでに一緒にご飯を食べたり……。

シンの恋路は順調だった。
あいつが現れるまでは。


なんか女子に人気とかいう副会長。しかもエアリスといるところをよく見る。
目つきが悪くて、いつも睨んでいるみたいな奴。
だけど運動神経抜群で、なんの競技だったが忘れたが、インターハイで中学で三度、高校で二度大会記録を塗り替えているだとか。

でもシンも副会長のクラウドにひけをとらない自信があった。
なんと言ってもシンは中学の100M走と走り幅跳びの記録保持者だ。
高校でも負ける気は無い。

そう言うわけでこっそりライバル視していたわけだが…


アノ日アノ会話ヲ聞いてシマッタノダ!


シンが帰途についているとき、たまたま前方にエアリスを見つけた。
一緒に帰ろうと思って、声をかけようとしたのだが、よく見るとクラウドがエアリスの横にいた。

恋人同士のような雰囲気。クラウドが普段では想像できないくらい優しい顔でエアリスを見ていた。(視力2.0以上)

その会話をシンは地獄耳で聞き取っていた。


「え…シン?シンがどうしたの?」

エアリスがきょとんとしてクラウドを見やる。

「いや…なんか結構一緒にいるから…」

困った様子で頭をかくクラウドは明らかに嫉妬しているようだった。

「うふふ、クラウドくーん、嫉妬しちゃったかなぁー?」

エアリスにはお見通しのようで、クラウドは赤くなった顔をそむけた。
エアリスは嬉しそうに笑ってクラウドの腕を取った。

「クラウドが考えてるようなこと、ないよ…?わたしにはクラウドだけだもの」

クラウドの顔が火がついたように赤くなる。

「それにね…シンは…弟みたいなの」

シンはその言葉に正直傷ついた。
だがシンの思いといえば、どちらかと言うと憧れに近かったので、きっと吹っ切れる気がどこかでしていた。

たぶん、二人が付き合っていることはうすうす感じていたし。


そう考えながら歩いていると、クラウドが急に後ろを振り向いた。
歩調は緩めないので、エアリスは気づかない。

だが確かにシンを見て、わざとらしく「にやり」とあのむかつくぐらい整った顔に勝ち誇った笑みを浮かべて、こちらを見たのだ。

シンの中で何かが切れた気がした。

エアリスへの憧れでもなく、失恋の痛手でもなく、純粋な敵愾心。

―――あいつは嫌な野郎だ!!


それからずーっとシンはことあるごとにクラウドに反発し、なにがなんでもクラウドを超えることに情熱を費やしてきた。

なかなか、順調だと思う。
女の子に人気も出てきたし……。






「待てってば、クラウド!」

しつこく呼び止めて、やっとクラウドが立ち止まる

自分から付いて来い、と視線を送った割にはうるさそうな表情だ。
こういうところがシンの神経を刺激して止まない。

「ぎゃあぎゃあ騒ぐな」

「…んなっ!そんなことより、さっさと説明しろよ!」

シンはこれでもかと言わんばかりに声を張り上げた。
クラウドの切れそうなほど冷たいアイスブルーの瞳と、シンの燃え盛る赤の瞳が互いをにらみ合う。
水と火、相容れない二つの属性はまるでクラウドとシンのようだった。

やがてクラウドが諦めたように視線をシンからはずし、溜息をつく。

逡巡の後、クラウドは重い口を開いた。


「ステラは…あいつは俺の従姉妹だ」

「!」

シンは数回瞬きした。
従姉妹といわれて驚きはしたが、事の説明にはなっていない。そう言いたいかのようにシンはクラウドを睨みつける。

クラウドは淀みなく説明しだす。

「ステラは昔からあんな風なわけではなかったんだ。ただ今は精神状態が不安定なだけで……」

「だからと言って!」

シンはクラウドに噛みつく。
「精神状態が不安定」という理由だけで綺麗に流されるつもりはない。

「少し落ち着け。説明はする。……ステラが五歳のときに、旅行の帰りの車の中で、玉突き事故にあったんだ」

ただそれだけを聞いただけでシンの中の怒りが突如冷える。

「火災が起こり、ガソリンに引火してとうとうステラ達の車も燃え出した。それでもステラの両親はステラだけは守ろうとして、外気に接する瓦礫の隙間に…少 しでも早く発見されるようにステラを置いた」

シンの頭の中でその光景がありありと繰り広げられる。

異常なほど熱くなった車内。ところどころにある刃物のような瓦礫。
吐きそうなほどのガソリンの悪臭。
傷ついた母親がステラに這いより、ぼろぼろの腕を伸ばして、瓦礫の隙間に怯える子供を横たえる。

運転していた父親はすでに死んでいるのかもしれない、でも、この子だけは。

じわじわと近づく死の瞬間。
それは瓦礫を伝うようにして迫る火の熱さに比例する。

やがてステラの目の前で母親に火が移り……



シンはそこまで想像して身震いした。


「…ステラは母親が焼け死ぬさまをじっと見ていた。ステラは奇跡的にほとんど無傷で助かったが、トラウマがひどすぎた。それで死ぬということが…例え花で あろうと以上に怖がる」

シンの胸にステラに対する同情と罪悪感が広がる。

引きつった顔に筋肉。恐怖で見開かれた瞳。少女のものとは思えない叫び。
痙攣する四肢。
あれは彼女の心の傷そのものだったのだ。

知らなかったとは言え、あの状況をむざむざ作ってしまった自分に苛立ちを感じえない。


「それだけだ、じゃあな」

クラウドはそれっきりシンを見ることなく校舎に消えていった。
シンは追いかけることができない。

ただ呆然とその後姿を見送るだけだった。







ステラはあたたかいベッドの中でまどろんでいた。

まるで母親の腕に抱かれているようだ。
ここにはなにも怖いものなんて無い。
あたたかくて優しい、そんな場所。

ステラの大好きな人の家。

ステラはエアリスが大好き。
優しくしてくれるから。

ステラはクラウドが大好き。
守ってくれるから。


ステラの大好きな二人。
今日は怖いことがあったけど、でももう大丈夫。



ステラはそっと瞼を開けた。

大きなクラウドのベッドにクラウド、ステラ、エアリスの順で川の字に眠っている。
大好きな人達だけのベッド。
ステラは二人にはさまれて、この上ない安心感を感じる。

エアリスはたまにステラの家に泊まってくれる。
クラウドはステラと一緒に暮らしている。

なんて幸せ。
ステラは幸せものだ。大好きな人といつも一緒にいられる。

ずっとこのまま三人でいられたらいいのに。


ステラはやがてまどろみだした。







シンは自室のベッドで寝転がりながらクラウドとの会話を脳裏で半濁していた。


可哀想なステラ。

自分に襲いかかってきたステラと花の世話をしていたステラはまるで別人のようで畏怖の念さえ抱かせる。

と言っても先程からシンの頭の中によみがえるのは、ステラのあどけない可愛らしい横顔だけで、それにシンは正直と惑う。

ステラの哀れな境遇を思っても次第に……勝手に頭の中で話が進んで、ステラの横顔がちらつく。

そのうちドキドキしてしまって、もうなにがなんだか分からない。
変なこと考えている自分が馬鹿みたいだし、そもそもあんな可哀想な子相手になにを考えているのだろう。

不埒な自分を叱責してシンは寝返りをうった。

早く寝てしまおう…。

それで明日早く、あの花を見に行こう。









「ねえ、クラウド、ステラ大丈夫かな」

朝早く、ステラは花を見に行くのだと言って、一人で学校に行ってしまった。
そのステラをエアリスは心配してならない。

起きたときにはステラはもう制服に着替え終わっていて、止めたのに家を飛び出していってしまった。

クラウドもあきれた様子で溜息をついている。

「でもまあいいんじゃないか。ステラが思ったよりも元気で」

「お花、なんとか無事だったから」

シンに潰された花はそれでも逞しくその生命を終えてはいなかった。

だが気になるのはシンのことだ。
シンはステラに襲われた―――いわゆる被害者だ。

「シンは意固地なところがあるからな……」

ステラのこと、疎まないと良いのだが。

「他人事みたいに言わない!クラウドも意固地…でしょ?」

ステラを心配しているところをエアリスにからかわれ、クラウドはむっとする。
エアリスは花のような笑みを浮かべてクラウドを覗きこんだ。

「ステラは幸せね。優しいお兄ちゃん、いるもんね」

クラウドはその言葉にふと頬を緩める。

「“お姉ちゃん”は……?」

ステラにとってエアリスは姉のような存在であり母のような存在でもある。
優しく包み込む深い慈愛はとても16歳の少女のそれとは思えない。

クラウドもエアリスがいるからこそステラを見守っていける。
三人でまた一つの家族のようなもの。

「家族みたいなもの…か」

「わたしはお姉ちゃん?それとも奥さんかな?」

いたずらっぽい口調でエアリスが問いかける。
クラウドは笑ってエアリスを引き寄せた。

「ステラがいないときは“奥さん”もいいかもな」

そう言って唇を優しく合わせる。
ステラの前では“お姉ちゃん”。

でもクラウドの前では……

「やっぱり奥さんより、彼女、がいいかな。今は」

“今は”

ちょっと将来の想像をしてしまって、恥ずかしくなって二人で微笑みあう。

ステラには悪いけれど、たまには二人きりもいい。
この気持ち、ステラも同じように思う日が来たなら、それはきっとステラと二人にとって素晴らしい日になるだろう。


クラウドとエアリスはそれから暫く二人きりの時間を確かめ合っていた。






「…・・っと重……」

シンは近くの雑貨店から買い物袋をぶら下げて出てきた。

ガーデニング用の柵を買ってしまった。
自分が潰した花が気になって、つい。

意外と高くて小遣いがパーとはいかなかったが、半分以上使ってしまった。

シンは自転車にまたがって学校への道をかけていく。

また脳裏にステラの愛らしい横顔が浮かんだ。

あの子が少しでも喜んでくれるなら……。


シンはペダルをこぐスピードを早くした。

学校に着くと、シンは乱雑な手つきで自転車を収容し、生徒会室の裏庭へと走る。
なぜか気持ちがはやる。
シンは不可解なこの気持ちにさいなまれながら、後押しされるように駆けていく。
息をきらしながら後者の角を曲がる。

いつもより庭が遠くへ感じられて、シンは苛立った。
買った物の重さで腕がじんじんしたが、シンは一向に構わず、一直線に裏庭へ走りこんだ。


「はあ…はあ…・」

がらにもなく息が切れて、シンは肩で息をする。
そんな時間ももったいなく思ってシンは花を見ようと傍へ駆け寄った。

「あ……」

シンは驚く。
あれほど潰してしまった花がまだ頭を上げてはいないもの、確かに生きていた。
茎が垂れているが、中には日のあたる方に向かって首を上げようとしているものもいくつかある。

シンはなんだか嬉しくなって顔をほころばせた。

―――生きていた。
まるでステラが笑ってくれたかのように嬉しい。

シンは買ってきた柵を取り出した。

近くの園芸用の棚にあったシャベルで周りの土を掘り返す。
その穴に柵を一個ずつ埋めていく。

その作業は思いのほか大変で、四角く囲むつもりでいたのだが、30十分してまだ一辺しか完成できていなかった。

汗がにじみ出てシンは袖で汗をぬぐう。

そのときぱたぱたと軽い足音が聞こえ始め、シンはいたずらを見つかった子供のように緊張した。


その人物が現れた途端、シンは呆然とそのすがに見入ってしまった。

肩までの金髪に、大きなすみれ色の瞳。
あどけなさが目立つその顔はステラのものだった。


「ステ…ら」

ステラがパッチリとした目でシンを凝視する。

もしかしたらまたパニックを起こすのではないかと、シンの肝が冷える。

だがステラの視線はゆっくりとシンの泥だらけの手に止まり、そこから植えられた柵へと移動する。

ステラは士気を挫かれるほどおっとりとした口調で話し出した。

「それ…お花…守ってるの?」

ステラの思いもかけない言葉にシンは驚く。
ステラは大きな目でこちらを見入ってくる。その視線が耐えがたくてシンは土いじりをした手を見つめた。

「う…ん、そう。こうしたら…花、守れるかなって…」

上手く言えなくてそんな自分に腹が立つ。

けれどもステラはちょこちょことやってきて、シンの隣に腰を下ろした。

「ステラ…守る。お花…」

そう言ってステラは手で土を掘り出した。
突然の行動にシンは唖然とする中、ステラはその綺麗な手で作業を続ける。
シンは慌ててスコップを差し出した。

「わ、だめだよ。手で掘っちゃ…ほらスコップ…」

慌てるシンをステラが不思議そうに見つめる。

「あ、俺シン。シン・アスカ!昨日は…そのごめん」

自己紹介と謝罪を一気にして、シンは自分が何をしたいのか分からなくなる。

だがステラはぽやんとした声でシンの名を呼んだ。

「シン……?」

「そう、シン!」

ステラはその名を宝物みたいに何度も呼んだ。

「ステラ守る……お花…シンも?」

「うん!」

ステラは今度こそシンの心を熱くさせるあのあどけなさのまま、ぽわぽわした笑顔を向けた。

シンは嬉しくて溜まらなくなる。

「じゃあ、さっさとこれ、完成させよう!」

「うん……!」

ステラの胸がぽわんと温かくなった。










「もう……学校に来てないって言われたから心配したのに!」

「まったくだ……」

クラウドとエアリスはあきれ返って目の前で幸せそうに眠る二人を見つめた。

事故にあったかもしれないと思って死ぬほど心配したのに。

「まあ、無事だっただけよしとするか」

クラウドが自己完結気味なのにたいし、エアリスは納得がいかなそうな表情をする。

しかし二人の泥まみれの手を見ると、そんないらいらもどこかへ消えてしまった。
よく見ると顔にも泥がついている。

ステラとシンは仲良く芝生の上に寝転がっていた。
満足そうな、幸せそうな顔で眠っている。


エアリスは頬をほころばせた。


「ステラ…よかったね」

聞こえるか聞こえないぐらいかの声にクラウドは不思議そうな顔をする。

「でも、起きたら二人とも生徒会室で厳重注意ね!」

―――二人はまるまる午前中の授業をサボったのだから。


「ああ、そうだな」


クラウドも同じ意見だ。




それでステラとシンは閉め切られた生徒会室でお説教を食らったそうな。






FIN



モクジ