Cold heart-ed X エアリスの夢

Cold heart-ed

X エアリスの夢

   





ここはどこ?




私はなんでこんな所にいるの?





真っ暗な闇の壁がどこまでも続く。

湿った空気が辺りに流れ、吐き出す空気が白くなるほど冷たい冷気が下のほうか
ら吹き出してくる。

いや、実際下から吹いてきているのかは分からない。

闇の壁のせいで方向感覚が麻痺しているからだ。


それでも当ても無くエアリスは歩き続ける。


どれだけ歩いただろうか・・・・・・。

もう何時間もいや、何日も歩き続けたような気がする。
だが不思議と足は痛くない。

このままどこまでも歩き続けれるような気がした。

だが、急に足が重くなる。

疲れたのではない。

そう、方向など当に分からないのだがそれでも・・・恐らくは前方から、強烈な瘴気(しょうき)が吹き出しているのだ。


足が何かに絡めとられたかのように動かないが、エアリスはそれでも一歩一歩と足を進めていく。


―――何かが私を待っている―――


どことなく、そんな気がして・・・。



そしてエアリスはまた歩き出す。





一歩一歩・・・確実に、その瘴気の源に向かって・・・・・・。


どちらかと言えば自分が歩いているわけではないような気がする、とエアリスは思った。


そう、まるで何かに導かれているかのように、何か強い存在に背中を押されているような感じ・・・・・・・。



自分と『それ』が出会うのは必然だとでも言うのだろうか・・・?



やがて瘴気はいっそうと濃くなる。息が詰まるほどのそれは『それ』が近いことを意味していた。





刹那―――





何かが光った。


エアリスはそちらの方へ進んでゆく・・・・。



しだいに、闇の奥にある『それが』姿を現してくる。

いや、それには姿など無かった。

唯ぼんやりとした光―――というには余りにも暗すぎたが―――がそこにはあった。

それからは絶え間なく瘴気が吹き出し、『それ』は正しく「邪悪」なものだった。



ああ、なるほど・・・とエアリスは思った。



―――これはあなたの意識なのね?―――


それは答えず唯ぐるぐると渦巻いている。




―――そこから出たいの?―――




ぐるぐると窮屈そうに渦巻いている。




―――あなた、意識が朦朧としてるね―――




―――でも残念。出してあげない―――




―――だって悪いことしたんだもの―――






グルグルぐる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






―――そういえば、あなたを見るの始めてね―――




―――話なら何度も聞いたことがあるけど―――




―――あ、初めてじゃないか・・・。この前も夢で見たわ、あなたの事―――




―――思い出しちゃった。あんまりいい夢じゃなかったから思い出したくなかったなぁ・・・―――






グルグルグルグルぐるぐる・・・・・・・・・・・・・・






―――運命なのかな―――




―――私たちとあなた―――




―――そうよね、当たり前か・・・―――




―――だって、あなただもの―――




―――それじゃあね、もう行くから。―――




―――それがあなたの罰なのだから・・・―――








突如、視界が真っ暗になった。




意識が急速に引き戻されていく―――









「ふああぁ・・・」





エアリスはベッドの上で勢いよく伸びをした。


「あ〜あ、よく寝たなぁ」


寝すぎて体の節々が少し痛いが、睡眠時間に関係なくあまり気分が良くないのは恐らくはあの夢のせいだろう。

小さい頃から何度も何度も親に聴かされていたことなので、あんな夢を見ても少しも怖くない。

自分の祖先の事はある程度知っているので自分があんな夢を見ることは少しもおかしなことだとは思わなかった。




エアリスは特にも気にせず起き上がると、服を着替えていつもの通り朝食を作りに寝室を後にした。































「エアリス」



「なあに?」



「なんでもない」






先程から彼女の姿が見えないので少し心配になって声を掛けてみた。

気配でいると分かっても視界の隅にでもいないと、つい探してしまう。

目の届く範囲にいてくれないと何だか落ち着かない気分になるのだ。







エアリスと住み始めて早4ヶ月。

エアリスはクラウドの家をすっかり改造して、毎日毎日我が物顔で生活している。

外に出ることが出来ないエアリスのする事は料理に洗濯、昼寝に編み物・・・とクラウドから見れば随分と気楽なものである。

おまけに綺麗好きなので、家の掃除を一日たりとも外したことは無く、クラウドの家はいつもピカピカだった。

4ヶ月前までは何にも無かった殺風景な部屋も、今では生活感溢れる場所へと変わって居心地が良くなっている。

機能を果たしていなかったキッチンやコンロも毎日フル活動中だ。




エアリスは今洗濯物を取り込んでいて手が離せない。
クラウドはすることが無いのでエアリスが来るまでテレビを見ることにした。



ソファーにどっかりと座ってテレビのリモコンを手にとる。

特に見たいたものもなく次々とチャンネルを変えていくと『新羅テレビ』で映画がやっていた。





ちなみに「新羅テレビ」とは言うまでもないが、新羅カンパニーの経営するテレビ局のことである。


そして、テレビを稼動するのに使う電気。これも新羅カンパニーの所有する原子力発電所から大部分が供給されている。


電気だけではない・・・ガスも水道も、全部。
生活に必要なものは全て新羅カンパニーが提供しているのだ。

・・・本当に影響力の強い企業なのだ・・・、新羅カンパニーは。





クラウドはそこでリモコンを置くとつまんなさそうに映画を見る。

映画の内容はこってこてのロマンス。

クラウドには全く興味の無い内容であるが、まだサスペンスやギャングものよりましだった。

彼から見ればそれこそ役者の立ち回りは素人丸出しで、見るに耐えれないのだという。


暫くボーっと見ていたがやはり彼の性格からしてむず痒くなってくる内容なので、気恥ずかしい気持ちのままクラウドはチャンネルを変えようとした。
が、



「あ、クラウド。チャンネル変えないで!」


洗濯を終えたエアリスが顔を窓からひょっこり出して言う。


「ん・・・?ああ」

リモコンを元の位置に戻すクラウド。



暫くすると洗濯籠を片付けたエアリスがとことことやってきてリビングに足を運んだ。






―――ごりごりごりと豆を挽く音がする。


エアリスの日課の一つでもあるコーヒー淹れ。


『仕事』のある昼夜逆転生活のクラウドは、いつもはこの時間に起きだす。

『仕事』については何も発言権の無いエアリスだが、クラウドのことはいつも心配だった。

自分の知らない間に出て行っては、知らぬ間に帰ってくる。

無事に帰ってきてくれるのは何よりなのだが、エアリスは素直に喜べないことだった。


クラウドが帰ってくると言うことは他の誰かが死んだということ・・・、しかも毎晩のように。


悪い言い方をすれば「人殺し」の帰りを待つなんて余りにも道徳的じゃないような気がする。


それでもクラウドには帰ってきて欲しいと願ってしまうのだ。エアリスは。

たとえ、それが死者への冒涜になるとしても・・・・・・。



エアリスがクラウドの好きなブラックのコーヒーを毎日入れ続けるのはそんな気持ちの現れ。

気づかいとでも言うのだろうか・・・・・・。

朝(実際は昼)にはすっきりするものが飲みたいだろう、と言う事で・・・。





「はい、クラウド」

エアリスが出来立てのコーヒーと焼いたばかりのスコーンを持って再び居間に現れた。

余りにも見慣れた風景。

クラウドはいつもの通りコーヒーカップとスコーンの入った皿を受け取った。


「ありが・・・と」



いつも『ああ』とか『ん・・・』としか言わずにコーヒーを受け取っていたクラウドだが、今日は初めてぎこちなく礼を言った。


「うん・・・」


エアリスはそれに気づいたのかどうだか分からないが、いつもの微笑を絶やさぬままでクラウドの隣に腰を下ろす。






―――それもかなり近くに・・・・・・・・・・。






エアリスは無用心だ。

クラウドはそう思った。



自分は男なのに、そんなに近くに寄られてはどうにも意識してしまう。

目をちらりとやれば、エアリスのワンピースの―――脇の辺りの―――隙間から胸の膨らみが見えそうになる。


嫌なわけではない。


むしろ見たい。

だから困るのだ。そんなに体が触れ合うほど密着されては・・・・・・。







「この映画ってとってもヒットしたのよね〜。クラウド知ってる?」


エアリスの声でクラウドは少しビクッとする。一瞬気づかれたか!?とか思ったりして・・・。


「いや・・・」


感情を押し殺して言う。


「ふ〜ん、そっか。私ね、この映画すっごく見たかったんだけど、私の村じゃ映画館が無くてね・・・自動車で3時間ぐらいの所にある街まで行かなくちゃなら なくて・・・」


「ど田舎だな」


「もうっ!でも私、映画は家で見るものだと思ってたのよ?映画館にいけるのはお金持ちだけって・・・」


「金持ちって・・・映画一回見るのに10ギルもかからないだろ」


「村じゃ物価がちがうんです〜!」」


「ど田舎」


「ぬう〜、また言ったな。人が気にしていること!」


「本当のことだろ?」


「もうっ!」










こういう時クラウドはふと思う。



もし今彼女を―――エアリスを殺さなければいけない状況にあったとしたら、自分は何のためらいも無く彼女を撃てるだろうか?


目の前で笑う美しく愛らしい少女を、血で染め上げることなど果たして出来るのだろうか―――?



以前だったらこんな事、考えも悩みもしなかっただろうに・・・。
彼女と会ってから自分はどんどん変わっていっている。




「見られた」事実は変わらない。

クラウドの精錬された価値観はエアリスを処分しなければならないと命ずる。

今このように談笑しているその時でさえ―――。


それでも彼女はやはり「敵」ではないのだ。

彼女が自分を誰かに売り渡すようなことは無い―――。そう信じる気持ちが心の片隅にあったりする。



―――殺るか・・・殺らないか―――



クラウドは平然と話す中でいつも心が揺れ続ける。



一緒に生活した四ヶ月の中で生まれた、彼女を思う気持ちの行方さえも分からぬ自分なのに―――



一体どうしろと・・・?











「・・・・・・ウド」



「クラウドっ」



「・・・ん?ああ、何だ?」


「クラウド、何だかぼーっとしてた」

心配そうな顔でエアリスが言う。

「そうか・・・?」


「うん。何だか眠そう」


「そういえばそうかもな・・・最近寝てない」


「もうっ、じゃあこんな事してないで、お昼寝しなきゃっ」


「え、あ。。おいっ」




エアリスはクラウドの腕を掴いて立たせると、腕にしがみ付く様にしてクラウドを寝室に連れて行った。


「疲れているときは寝るのが一番なのよ?
 だから今日はゆっくり寝て頂戴!」


そう言ってエアリスはクラウドを強引にベッドに寝かしつける。

はたから見ればクラウドを押し倒しているように見えるのだが・・・。



「お布団、持ってくるから大人しく寝て待ってるのよ〜?」


まるで子供でもあやすかのように言って、エアリスは部屋を出て行く。




―――なんだかこっちが年下みたいだな・・・。

クラウドはそう思ったが、自分よりいくらか年端かな少女の気遣いに甘えることにした。






ゴロンとベッドに横になる。
頭の後ろで両腕を組み、天井の一点を見つめて感慨にふける。



自分はいつまでエアリスとこうしていられるのだろう、と・・・。



いつかはエアリスは表に返してやらなければならないという事は分かる。


その日はいつなのだろうか・・・?
果たしてそんな日は来るのだろうか―――?


彼女はまた新羅カンパニーに捕まえられたりしないのだろうか―――。


逃がしたところでそれでは意味が無い。
事が収まるまでは、彼女を手元に置いておいた方が良いのだろうか―――


自分がそう願っているだけなのか?


では彼女はどうしたいのだろうか―――。



彼女は自分の事をどのように思っているのだろうか――――――




そもそも俺は――――――――――――――――――――――――??




・ ・・そんなはず・・・あるわけ無い――――――




彼女を思う気持ちの故に、彼女を手放さなければいけない現実と向き合うことが唯唯苦しかった。









「クラウド〜。お布団持ってきたよ〜?」


ふかふかの布団を携えてエアリスが戻ってきた。

クラウド仕様の毛布のため、エアリスにその毛布はかなり大きく彼女の視界を完璧に遮っている。


よたよたと、限られた視界を頼りに危なっかしくベッドに近づいてくるエアリス。



いつもだったらすぐに助けに入るクラウドだが、この時はどうも動こうという気がしなかった。



本当に自分はどうすればいいのか・・・・・・という考えが頭を支配して、思考回路がOFFになっていたのだ。






「きゃあっ!」






ぼすっ!!






案の定、エアリスがバランスを崩してこけた。


肝心の毛布は床に落ち、エアリスは寝転んだままのクラウドの上にダイブする。





「・・・う・・・っ」





日々体を鍛えているクラウドには痛くも何とも無かったのだが、クラウドは別の理由でうめき声を上げる。





エアリスはクラウドの上に覆いかぶさるように転んでいた。


つまり・・・

エアリスのふくよかな胸がクラウドの顔に当たってしまったのだ・・・。
はからずして・・・・・・。



当のエアリス本人が気づかなかったのが不幸中の幸いだろうか・・・?



・・・いや、やっぱり気づいたほうが良かったかもしれない・・・。







何も考えていなかったのが悪かったのだろうか―――。


まるでそれを合図のように突如せり上がってきたクラウドの欲望が、理性の壁を攻撃する。








エアリスをどうにかしたいという強い欲望に駆られる。





とてもじゃないが、自分では抑えきれない。果てしない欲情。

努力しても平常心が保てない。
冷静さが著しく減少する。


自分が欲求に屈するのが手に取るように分かった。






「あっ・・・クラウド、ごめ・・・・きゃあっ!?」




クラウドは自分の頭の後ろで組んでいた腕を解くと、おもむろにエアリスの腰へ両腕を巻きつけた。



そのまま体を半反転させてエアリスを組み敷く。





「やだっ・・・クラウド、はなし・・・て・・・」




びっくりしたエアリスがクラウドから離れようとしてもがく。


逆にその抵抗が、クラウドを煽る。


クラウドはエアリスの腿の上に跨り腕の中に彼女を閉じ込める。
頭では止めるべきだと分かっているのに、体が言うことを聞かない。



腕の中にいる彼女の美しさと愛らしさが挑発的にさえ思う。





―――手に入らないのなら、滅茶苦茶にしてしまおうか・・・。




エアリスを思う気持ちは空回り、クラウドの行動はエスカレートしていく。


ふいに腕を折り体を密着させる。
胸板に二つの柔らかな膨らみを感じた。



興奮と同時に頭に冷え冷えとした水脈ができる。



「っ・・・クラウドォ・・・」




エアリスは涙で潤んだ瞳でクラウドを見上げる。

しかしその熱を持った瞳が異常なほどクラウドを掻き立てる。
彼女にもっと触れたいと―――











自分は何度彼女に触れたいと思っていたことだろう―――



世間知らずで無防備で、目を奪って離さないほど美しい人、エアリス。


翡翠の大きな瞳。真っ白な肌に形の良い赤い唇。女性らしい緩やかな曲線を描く体のライン。
すらりと伸びた白い滑らかな足。
華奢で、手を伸ばせば消えてしまいそうなぐらい儚げで、それでいて微笑んだ顔は思わず抱き締めたくなるぐらい愛らしい。



おまけに馬鹿みたいに人懐っこくて、幼い子供のように無邪気。



振り向けばいつでも傍にいて、名前を呼べば駆けてきて、手を伸ばせばいつだって触れることができる距離に彼女はいた。


慕われることが鬱陶しいどころか嬉しくて、残酷なまでの麗しさを称える彼女の白いうなじ、何度触れたいと思ったことだろう。



彼女を抱き締めたいと、どれだけ願ったことだろう。






密着させた体から彼女の鼓動のリズムが伝わってくる。


彼女のスリットの深いワンピースから見えるむきだしの白い太腿をクラウドは撫でた。




瞬間、エアリスの体がびくりと振るえる。


伝わる鼓動が早鐘の様に早くなり、クラウドの耳をエアリスの深い吐息が甘く撫でる。


堪らずエアリスの耳にクラウドは噛み付いた。



「ひゃ・・・・ぁ・・・」



甘噛みにエアリスの口から蚊の鳴くような悲鳴が漏れる。


同時に体から力が抜け、クラウドのなすがままになってしまう。

クラウドはエアリスの耳から白い首筋へと唇を這わせる。








抵抗ができない―――。


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い・・・。


やだやだやだやだやだやだやだやだ・・・・・・・・・。




クラウドに体を撫でられるたび、下へ下へと下がってくる感触を確かめるたび恐怖で体が振るえる。


いや、それさえももう敵わない。
押さえつけられた体では一挙一動が彼によって支配され制限されている。

自分の体にかかる重みに耐えることが今の彼女には精一杯だった。




そしてなにより、普段冷徹で冷静な彼が見せることのない、この熱っぽい眼差し。
唯それだけで、体をえぐられて入る様な気がしてくる。



恐怖と同時に与えられるぞくぞくとした、快感。
それは、見つめられ所有されることへの悦び?



彼に構って貰いたいという欲求が満たされたことによる一種の安堵感―――。




しかしそれは心理的なことであって、決して身体的な欲求ではない。

だからこそ、怖い。
振るえることすらできぬ体で唯心の奥底で怖い怖い、と念じることしかできない。
まるでとらわれた子ヤギのように、ほふられるのを待つ子羊のように。




エアリスはクラウドを見上げた。
彼の熱っぽい視線に体を絡めとられ、息が詰まる。

数ヶ月前までは感じることのなかった、彼の自分への熱い思い。
瞳の奥に隠された日に日に深くなりゆく、慈愛。


それに気づいてしまったのは果たして良いことだったのだろうか―――彼にとっても、自分にとっても。

気づかない振りができれば楽だというのに・・・。







クラウドのことは好き―――。


男性として、好き。


だれよりも、好き。


でもね、怖い。今のクラウド、とっても怖いよ―――



だからお願い、クラウド―――――――――――――






涙が溢れた。

恐怖で凍りついたままの体から―――

ぽろぽろぽろぽろと、頬を伝い、とめどなく流れていく。
頬伝い、首筋を伝い、やがてクラウドの唇に届く・・・・・・。

熱いその液体をクラウドは口の中で転がした。


――――――――――――――――――。


ゆっくりと唇を離し、行為を止める。





「エアリス・・・」




そっと名前を呼んでみる。


「・・・・・・・・・」



返事は、ない。

怯えた瞳が返ってくるだけ・・・。




「ご・・・めん・・・」

「・・・・・・・・っ・・・」


ぎこちなく謝ったがエアリスは全てを拒否するかのように枕に顔をうずめてしまう。自分の顔を見るのも嫌なのだろうか。




「こっち・・・むいて・・・」


クラウドの嘆願にもエアリスはいやいやと首を横に振るだけ。
枕を抱き締めて唯でさえ小さい体をきゅっ、と縮こまらせて・・・。



「もう、大丈夫だから・・・さ・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「本当、・・・・・・すまない・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」



晴れがましいぐらい応答は一切ない。
自分が悪いと分かっていても、ここまで無視されると苛立ちが沸いてくる。


あくまでクラウドは殺し屋だ。
他人を気遣うことなど得意じゃないし、何より自分主義。

そうじゃないと殺し屋なんてやっていけない。




「おい、何とか言えよ」



エアリスの細い腕をぐいっと引っ張って枕から強引に引き離す。

そのまま、ひっくり返して自分の方を見させる。
それでもエアリスはせめてもの抵抗で顔を逸らしてクラウドの顔を見ないようにしようとする。



それがクラウドには面白くない。


先程にも書いたように彼は自分主義なのだ。


エアリスの顎を掴んで顔を逸らせることが出来ないようにすると、そのままエアリスの小さな頭を掴んで乱暴に唇を押し当てた。


エアリスが驚いてじたばたと抵抗しだす。
だがクラウドに適うわけは無く、さらに唇を割って舌が滑り込んくる。


それがエアリスのなけなしの抵抗心を摘み取ってしまう。

ふわふわと体が浮いている感じがする。気持ちいい・・・??

夢見心地でクラウドの首にエアリスは手を回した。
それに応えてクラウドがエアリスの細い腰を掻き抱く。




「・・・・・・ん・・・」


どちらからからともなく、唇を離す。




「クラウド・・・・・」

「ん?」

「・・・の、えっち、キス魔、すけべ・・・しかもむっつり」

「・・・悪かったな」

「・・・・ん・・・・・・・・」



顔を見上げたらクラウドのキスがまた降ってきた。




「悪いと思ってるんだったら、反省してよっ」

エアリスが顔を真っ赤にして言う。

「悪いとは思うが、あまり反省しないな。」

「それじゃあ駄目じゃない・・・」

「じゃあ、エアリスもだな」

「へ?」

「今後俺を挑発するような言動は控えるように」

「そんなことしてないもん!」

「してる。それでまた今日みたいなことが起きても責任は取らないからな」


そのセリフに恥ずかしかったのかエアリスが真っ赤な顔を逸らす。


「もう!クラウドの馬鹿!!もう知らないっ!」


真っ赤な顔をそのままにして、エアリスはベッドから立ち上がりわざと部屋のドアを強く閉めた。


クラウドは半ば呆れたように肩をすくませると、今しがた寝転んだばかりのベッドから身を起し、怒りっぽい少女のような彼女の後処理をするべく部屋を後にし た。

だが、部屋を出て行くその顔にはほんのりと朱が差している。

不満そうな表情の裏に隠されたのは以外にも差恥心だった。








とんとんとん、とまな板を楽しげな包丁がたたく音がする。

エアリスは夕食の準備をしていた。

今日の夕食はクラウドが前に美味しいって言ってくれた鶏肉のトマト煮込み。
野菜たっぷりミネストローネと、あっさりサラダ。ニシンのオイル煮にマッシュポテト、それに手作りパン。

かなりのボリュームであるが、全体量の三分の二以上はクラウドが食べてしまう。
見た目は細身だがかなりの大食漢だったりするクラウド。
どこに消えていくのかというほど良く食べる。
しかし、ひとたび脱げば納得。細身に見えるのは筋肉が均等についているからで、鍛え上げられた体はまるで鋼のようなのだ。





「ら〜ららら〜・・・」

鼻歌交じりに夕食を作るエアリス。


もともとの天然が幸いして、さっきまで怯えていたのは何処へやら、クラウドに抱き締めてもらったのとキスしてもらったのとで「襲われた」のを都合よく忘れ る鳥さん頭、エアリスは上機嫌だった。


「きょっおのごっはんは鶏肉煮込み〜〜〜ぃ♪」


もはや専業主婦状態のエアリス。
新婚さんよろしく幸せそうな顔でトマトの湯剥きを始めた。




「・・・ぅ・・・あっ・・・」



幸せ真っ最中のエアリスを突然の強烈な頭痛が襲った。
あまりの痛みに手元が不安定になり、湯剥き中のトマトが手から滑り落ちた。
べちゃっと嫌な音をたててトマトがつぶれる。

慌ててトマトを拾おうとしたがあまりの痛みにその場でうずくまってしまう。

「い・・・た・・・。やだっ、何なの?」

痛む頭を手で抑えて壁に寄りかかるエアリス。
さもすれば飛んでいってしまう意識を何とか落ち着かせようとして意識を痛みに集中させる。

瞬間、鼓膜が破れそうなノイズのような耳鳴りが始まる。

吐き気がしてエアリスは堪らず床に倒れこんだ。


「あ・・・・や・・・・・クラ・・・ド・・・」


助けを求めて彼の名を呼ぶが、蚊の泣くような声しか出ず当然クラウドはこない。




やがてノイズがざわざわとした音を持ち始め、擦れるような途切れ途切れの声となってエアリスの頭に響く。

訴えるような・・・そんな物悲しく、どこか苦しみさえも感じられる響きを伴って。

それは、古代の人々がライフストリームと呼んだものの源。
人々は昔その声を聞きとり物事を決定したと言う。

星からの声――――――――――――――――――。

すなわち、苦しみからの救済を求める嘆願―――。


それはエアリスにも直ぐに分かった。
幼いときから何度も聞いたことのある声、分からぬはずはない。

だがその響きは、今まで一度も聞いたことがないような苦しみ。
あえぐような、どこか怯えるような、そんな響き。

エアリスは肉親が目の前で倒れた時のようなパニックに陥った。


「え・・・?どうしたの・・・?苦しいの?・・・助けて欲しい?・・・ごめんよく分からないよ・・・もっと大きな声で!」


ノイズが大きくなる。
族長の末裔である、たった一人の星の後継者に助けを求めて―――。

それでも声を聞き取ることは出来ない。


「何が言いたいの・・・分からない・・・・え・・・?意識?邪悪な・・・?再・・・び・・・・・・・?・・・・分からないよ・・・分からない・・・!」


頭が割れそうなぐらいノイズが大きくなる。


「・・・闇・・・混沌と・・・?・・・飲み・・・込んで・・・復活?何が・・・?
な・・まえ・・・教えて・・・くれるの??」

ノイズの雑音が増し声がそれに掻き消されそうになる。

「な・・・なに?・・・・・フィ・・・ス・・・セ・・・?セ・・・フィ・・ス?ああっもうそれ以上言わないで!頭割れちゃうよ!!」

声の源に向かってエアリスは叫んだ。
それっきり声は聞こえなくなり、激しいノイズが頭を蝕む。
目の前がかすみ、意識が遠のいていく・・・・・・

エアリスが意識を手放そうとした、その時だった。


「エアリス!!」


異変に気づいたクラウドが台所にとび込んできた。
たくましいその両腕で抱き起こされる。


「エアリス・・どうした!?」

「クラ・・・ド?クラウド!」

意識が急に覚醒する。反動のように、興奮したエアリスがクラウドに噛み付くように話し出した。


「ああっ、クラウド!大変!大変なのよ・・・っ星が・・・星が・・助けてって!
苦しいって!私助けてあげなくちゃ・・・!」

「おい!落ち着けエアリス!」

「行かなきゃ!行かなくちゃ・・・私・・・!私・・・の役目なの!ああっ、でもどうすれば良いのかしら?分からないわ!・・・どうしようどうしようどうし よう!!」


完全に錯乱したエアリスが狂ったように喋る。

「エアリス、分かったから!分かったから取り合えず落ち着け!」

必死にエアリスをなだめるクラウド。

「やだやだ!!わからないよっ!私にはできない・・・できるわけないよ!!」

クラウドの腕の中で暴れるエアリス。

「エアリス!」

クラウドは暴れるエアリスを自分の胸に引き寄せた。
そしてそのまま有無を言わせず口付ける。


「・・・・・・・・・・・・・・ふ・・・」


エアリスの口から甘い吐息が漏れ、縮んだ筋肉が一気に弛緩する。
あれだけ硬くなっていた身体から不思議と力が抜ける。


「クラウド・・・・・・」

「落ち着いたか?」

「うん・・・・・・」

「どうしたんだ?聞いてやるから話してみ・・・・・・・わ・・・」


瞬間、エアリスがクラウドに抱きついた。緊張が一気に解けて感極まったのかそのままクラウドの厚い胸板に顔をうずめて泣きじゃぐる。

クラウドは内心どきどきしながらエアリスの腰に腕を回して不器用だがしかし優しく抱き締める。


「ほら、落ち着いたら話してみろよ」

「うん、うん・・・」


エアリスをリビングのソファーに座らせエアリスが落ち着いたのを見計らって優しく聞き出すクラウド。


「あ・・・のね・・・わた・・・し魔法使いだって・・・前言ったよね・・・?」

「ああ、言ったな」

「本当はね・・・魔法・・使いじゃないの・・・」

すすり泣きながら賢明に話そうとするエアリス。
クラウドは辛抱強くエアリスが話し出すのを待った。

「ううん、違う・・・正確には・・・が正しいかな・・・」

「正確には・・・?」

「うん・・・クラウドだから・・・言うけど・・・私・・・ううん、『私たち』・・・は大昔、星の声が聞こえたの・・・」

「どういうことだ・・・?」

「そのまんま・・・星の喋ることが聞けて、それで星の力・・・ライフストリームを使って魔法・・・使えたの・・・」

「・・・それが関係あるのか・・・?」

「う・・・うん・・・・・・・・・・・っう・・・」

エアリスがまた震えて泣き出した。よほど辛かったのだろう。

クラウドは再び両腕でエアリスを包み込むと、低い心地のよい音色で囁く。


「大丈夫だ。少しずつでいいから話せ。そのほうが楽になるかもしれない・・・。」


彼にしては優しい口調。それだけで体の重荷が取れるような気がする。


「うん・・・うんっ・・・!」

エアリスは儚げだったが、それでもしっかりとうなずいた。






エアリスは全部話した。

頼るべきその人に、自分の知りうる全てのことを―――。

直ぐに詰まってしまう声で、搾り出すようにゆっくりと。

その間クラウドは慰めるように回した腕を放す事無く、きっと誰にも話せなかったであろう、その話を聞いていた。

少なくとも彼女にとって重荷となっていたに違いない。
だから――――――。




「えっと、つまり昔の人は星・・・の声が聞けて、それで滅んで、で、最後の生き残りがエアリスなんだな?」

だいぶ落ち着いたエアリスがこくり、とうなずいた。

「それで、突然星・・・の声が聞こえて、それで気分が悪くなった?」

「うん・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「それにね夢も見たの。あなたにあってすぐと、今日。何も考えてなかったけど・・・もしかしたら星が私に何か伝えたがってるのかも・・・」

「夢・・・?」

「うん・・・」

エアリスが罪を告白するかのように、恐ろしげに話し出す。

「最初は、過去の回想みたいな感じだった・・・。すごく大きな、人みたいな形をしたのが・・・昔の、私の仲間をどんどん殺していくの・・・。私がそれを眺 めてる感じで・・・。」

エアリスがその光景を思い出し身震いする。

「次は私が体験してるみたいな夢だった・・・。暗い暗い闇の壁の中を何かに後押しされるように歩いていくの。暫くしたらその闇の中で、混沌とした『意識』 に出会って、それがこの闇から出たい、出たいって言うの・・・。
初めの夢はすぐに忘れちゃったんだけど、この夢の中で思い出したの。」

「意識って何のことだ?」

「ん・・・、私にもよく分からないんだけど、唯漠然と『ああ、これって夢の中に出てきたあの意識なんだ』って思ったの・・・。思ったて言うよりは感じたっ て言ったほうが正しいのかな」

「予知夢・・・ってやつか?」

「分からない・・・。私には星が助けてって言っていることしか分からないもの。
今何が起きているかも、これから何が起きるのかも・・・」

エアリスが不安にクラウドの服をぎゅっと掴んだ。

これから、もしかしたら起きうることが恐ろしい。
不確定要素が多すぎて何が何だか分からないのに自分は『何か』をしなくてはならない。

その『何か』もまた分からない。

そしてその『何か』をしなくてはならぬ自分さえも。



「分かった、エアリス。・・・・あんたはもう寝たほうがいい・・・」

一通り話し終えたエアリスの頭をクシャリと撫で、クラウドが優しく言った。

「え・・・でもご飯・・・・・・」

「いい、後片付けはして置く」

「でも・・・・・・」

「なんだよ、不安か?」

「うん」



即答。
ちょっと、ショック。



「クラウドが後片付けしたらお台所、吹っ飛んじゃう」


ごもっとも。
でも、   ぐさっ。


「分かった・・・落としたトマト以外は置いておく」

「うん、そうしといて」

「・・・・・・・・・・・(ちょっと悲しい)」

「どうしたの?」

「なんでもない」

「そう?・・・・・ひゃっ」

クラウドがふわりとエアリスを抱き上げた。
そのまままっすぐ寝室へと連れて行く。

「わっ、やだクラウド、降ろして!」

「大人しくしてろ。また倒れられたら迷惑だ」

ちょっと冷たく言い放つところがクラウドらしい。
が、エアリスにはあまり冗談は通じない。
ぷ〜っと頬を膨らませ、抱えられつつも元気に怒り出す。


「迷惑なんだ、へ〜、クラウドそんなこと言うんだ、ふ〜ん・・・」

「分かったから寝とけ」

睨んで怒ってるんだぞっ、とアピールするがクラウドの軽く流されてしまう。

そしてエアリスがしたように強引にベッドに寝かされ、毛布を頭のてっぺんまで掛けられてしまった。

「んぷっ!クラウド、女の子はもっと丁寧に扱うものよ!」

「はいはい、いいから寝ときなさい」

「今、何気に子ども扱いした〜〜っ」

「実際そうだろ」

「2つしか変わらないもん」

「はいはい」


クラウドは一人で一方的に怒るエアリスをなだめると、頬にちゅっとキスをした。
エアリスがあっという間に沈静化する。


「暫くしたら、起してやる」

意地悪く笑って言う。

結局クラウドが終止優勢で勝った。

「くやしい・・・」

誰もいない寝室でエアリスは虚空に向かってそう呟いた。














とんでもないことを聞いた。

それがクラウドの素直な感想だった。
考えれば考えるほど溜息が濃くなる。
自分は何かとんでもないことに首を突っ込んでしまった。

しかも、もう引けない。
心身ともに不安定な彼女をこのままにして置くなんて、自分には出来ない。

と言ってもどうすればいい?
すべきこと、やるべきこと、すべては彼女にしか分かり得ない事だ。
その彼女が分からないと言う。

なら八方塞じゃないか。
手の下しようが無い。

だからと言ってこのまま放って置くわけにもいかない訳で・・・・・・。



クラウドは何も無い平原に地図も無く放り出された気分になった。




気づいたら、もう三時間たっていた。
辺りはすっかり暗くなり、そろそろ夕食時。

そろそろエアリスを起そうか・・・・・・。

そう思ったときだった。






ばたんっ!!


乱暴にドアが開いた。

駆け込んできたのは血相を変えた黒髪の男女。


「ザックス、ティファ!?」


ただならぬ二人の様子にクラウドは自然と身構えた。


「クラウド、エアリスは!?」

「今寝てる。起すか?」

「ううん、その方が都合が良いわ」

走ってきたのか、ティファもザックスも肩で息をしている。
よほどの急用なのだろうか?


「クラウド大変だ!さっき入ったばかりの情報なんだが・・・えっと・・・どこから説明すりゃぁ良いんだ?」

「クラウド私の情報網に引っかかった事なんだけど・・・え〜っと、順を追って説明するわね。数ヶ月前に新羅カンパニーが発表したことなんだけど、クラウド も知ってるわよね?その・・・大昔の地層から仮死状態の生物を発見したって事」

「ああ、確か歴史上の大発見だって騒がれてたような気がするな・・・それがどうした?」


何億年か昔の地層から仮死状態の生物発見。
このニュースはテレビ局を問わず大々的に報道され、未だに人々の記憶に新しい。
当然クラウドも知っていたわけだが、それと何か関係はあるのだろうか?


「この辺は報道されてないんだけどよ、何でも見つかったその生物とやらが体がばらばらの状態で見つかったらしくて、え〜っとそれで生命反応は有るんだけ ど、どうも自我がない、みたいな・・・・・・」

「落ち着け、ザックス。意味が分からん」

「ザックス、説明苦手なんだからちょっと黙っといて!」

「わりっ、ティファ」

「あのね、クラウド。さっきもザックスが言ったけど見つかった生物っていうのが、全体の恐らくは二分の一のパーツだけだったの。しかも、ばらばら。そのせ いなのかどうだかは分からないけど、その生物に明確な意識は見受けられなかったの。それでもパーツ一つ一つには確かな生物反応があった・・・。」

クラウドの眉がわずかに動いた。

「それで漏れ出した情報によると新羅カンパニーの研究者が、意識がないのはそれが不完全な体だからだ、完全な肉体があればその体を媒体に意識を確立するこ とが出来るはずだ・・・て言ったらしいの。」

「・・・・・・・・・」

「それで当然のように媒体探しが始まって・・・その第一サンプルの名前がね・・・
・ ・・・・・エアリスっていうの」


静寂が辺りを支配した。
どこかうす寒ささえも感じる、そんな沈黙。

やがて物事を理解したクラウドが重い口を開く。


「・・・大丈夫だ。あんたらには言ってないが、彼女は新羅カンパニーに連れられて来る途中で逃げ出したと言っていた・・・。それが本当ならまだ、実験には 使われていないさ・・・」

クラウドが自分自身を納得させるように言う。
だが、ティファの一言が甘やかな期待を打ち砕く。

「ううん、違うのよ違うのよクラウド。問題はこの後なの・・・・・・」

辛そうな表情を浮かべるティファ。
暫くの沈黙の後、意を決したようにゆっくりと話し出す・・・。

「そう、確かにエアリスは実験前に逃げたわ・・・。確かに逃げたのよ。でもね、サンプルが無くなったところで実験は終わらないわ。エアリスではなくとも確 かな肉体を持ち合わせている人間なら本当のところ、良いんだもの・・・。」


「落ち着いて聞いてねクラウド。その研究に携わっていたある科学者がエアリスの変わりにサンプルとなったの・・・もちろん無理やりね」

「・・・・・・・・・」

「・・・それが、あなたのお兄さんよ、クラウド・・・・・・」

「・・・なんだって・・・?」

クラウドが驚愕に目を見開く。

「・・・サンプルに?・・・・・・セフィ・・・ロス・・・が・・・?」












運命の歯車は動き出す。



ゆっくりと、それでも確実に・・・・・・・・・。










         




続く